Life日記

Life【生活、人生、命】に関わる私見をつれづれなるままに書きます。医療従事者。子育て中。

【健康】有酸素運動を行うために知っておくと便利な「AT」とは

有酸素運動が身体にいい」

というのはどこで聞いたことがあると思います。

 

しかし、有酸素運動をやろうと思うけど

・自分がやっている運動は有酸素運動になって

 いるの?

・自分に「ちょうどいい運動の強さ」って

 どのくらいなの?

と疑問に思うことがあるかもしれません。

 

今回は有酸素運動を行う上で知っておくと便利な

AT:(嫌気性代謝閾値

について紹介します。

 

 目次

[:内容]

 

 

ATとは

ATは、日本語ではいろいろな表現をされ、

嫌気性代謝域値、無酸素性作業閾値、換気域値、乳酸域値などと言われます。

 

ATとは、有酸素運動から無酸素運動への切り替わりポイント

のことをいいます。

 

有酸素運動無酸素運動の違いは以下の通りです。

 

有酸素運動:比較的軽い負荷で、長く続けることができる運動

      (「ややきつい」と感じるくらいまでの運動)

 

無酸素運動:負荷が高く、息をこらえられればできないような、

      長続きしない運動

      (「きつい」と感じる運動)

 

運動の負荷が低い有酸素運動では、呼吸が楽で、運動は長く続けることができます。

しかし、運動の負荷が段階的に強くなってくると呼吸は乱れ始め、筋肉には疲労

がたまり、長く運動を続けることが難しいなってきます。

この、有酸素運動から無酸素運動への切り替え

ポイントのことをATといいます。

 

 

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上の図で示すように、運動の強さが段階々上がって

いくと、「排出される二酸化炭素の量」の線の傾きが

急に強くなっています。

これは、なぜかということと

 ①弱い運動では、酸素が十分に供給され、

  エネルギーを無理なく産み出させています。

  (使った酸素量と出される二酸化炭素炭素量の

  割合は1:1)

  しかし、運動が強くなるとエネルギーが

  たくさん必要となり酸素が不足します

 ②そのため、酸素以外をエネルギー源として利用

  し始めます

 ③酸素以外をエネルギー源として使うと、

  副産物として乳酸が増える

 ④乳酸は酸性ですから、増すと身体に

  害を及ぼすします

 ⑤それではいけないと、身体の中のアルカリ性

  物質が使われ、中和しようとします

 ⑥中和された結果、二酸化炭素が余計に

  作り出されます

 ⑦身体の中に炭酸ガスがたまるとよくない

  ので二酸化炭素をたくさん外に出します

  (使った酸素量よりも出される二酸化炭素

  が多くなる)

 

といった理屈です。

運動が強くなってきた初期の段階では呼吸を

深くして対処しますが、それにも限界があり

段々と呼吸の数を増やして、できるだけたくさん

二酸化炭素を出そうとします。

 

運動の強さがATを超えてくると

呼吸が荒くなってくるのはそのためです。

 

 

人によってATとなる運動の強さは違う

 どのくらいの運動でATになるかは人によって違います

有酸素運動として行える運動の強さは人によって違います)。

例えると、

体力の少ないご高齢の方は、歩く速さを少し速く

しただけでも息がハアハアと乱れ、無酸素運動

なってしまうのに対して、

ラソン選手は、ジョギングをしていても息が

乱れず有酸素運動でこなしてしまう

といった具合です。

 

 

ちょうどいい強さの運動とは

ATを超えた運動(無酸素運動)を続けると

酸素が不足した筋肉により多くの酸素を送るために

心臓のポンプがより速く動き、末梢の血管をしめて

血圧を高め、心臓や血管を酷使します

 

疾患のない若い人やスポーツ選手であれば問題とは

なりませんが、ご高齢の方や、循環系に問題の

ある方法では、長時間の無酸素運動は注意が必要

です。

 

運動の目的が、「健康」のためであるのならば

無酸素運動よりも有酸素運動で行うことを

お勧めします。

逆に言えば、有酸素運動で運動を行っている

限りは血管や心臓への負担が少なく、

安全で、良い効果が得られるので

積極的に行うといいでしょう。

 

しかし、一口に有酸素運動としても幅が

あります。

 

ある人の体力では、早歩きでATになる

とします。

呼吸が荒くならない範囲であれば

ゆっくり歩く運動も、早歩きの運動も

同じ有酸素運動です。

 有酸素運動をやっていると言っても

ゆっくりの歩きを10分行うのと、

早歩きを10分行うのとでは

効果の出方に違いがあります。

 

弱すぎる運動では、身体に良い効果を出すの

時間をたくさん要します。

 

 

運動に関する研究の多くは、「AT近くでの運動

(以下ATレベルでの運動)」を一定時間行うと、

持久力や認知機能の改善、動脈硬化、心疾患、

糖尿病などの各種疾患の予防・改善の効果が

得られると報告しています。

 

より短い時間で運動の効果を最大限に

得たければ、

ATレベルでの運動が「ちょいどい」

運動の強さ

と言えると思います。

 

しかし、運動というのは、ある1日だけ頑張る

のみで他の6日間は休んでいるようでは効果が

少なく、一週間の合計としてどのくらい

動かしたかの方が重要です。

最近は、疾患の予防のためには一日の中で

どれだけ動いたか(活動量)が重要

と言われています。

軽い運動でも、一日の中の安静時間を少なくして、

動く時間を多くとれば、効果がある

と報告されているのです。

 

運動の時間を細切れに分けて行うやり方でも効果があります。

 

 

無理して「ATレベルでの運動」にこだわら、

酸素運動を習慣的に、末長く続けていくこと

をお勧めします

 

 

ATレベルでの運動の見極め方

自分にとってどのくらいの運動が「ATレベル

での運動」かを見極めて、自分にあった運動の

強さに調整しましょう。

 

 

ATレベルでの運動の強さ」(ちょいどい

運動の強さ)の見極める方法は以下の通りです。

 

①  人と会話をしながら続けられる

 (鼻歌を歌いながらでも続けられる)

②  「楽」〜「ややきつい」

  と感じる

③  呼吸が荒くならない

 

 

要は心地よく長く続けられるくらいの運動

であれば有酸素運動の範囲だと思って頂けると

いいと思います

 

「きつい」と感じてきて、ハアハア呼吸が荒く

なっていたら無酸素運動になっている可能性が

高いため、

運動の強さを緩めるか、休みをいる

して調整しましょう。

 

※注意点:すでに何か病気を抱えている方は、疾患の

     種類・重症度によっては、有酸素運動でも

     よくないことが生じることもありますので

     担当医にご相談の上で運動を行ってください。

 

 

 

以上、ATについての紹介でした。

 

 

 

参考

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-056.html

・斎藤雅彦、上嶋建治、労作時呼吸困難間の運動生理学的評価ーBorg指数と心肺運動負荷試験を用いた検討ー、日本臨床生理学会雑誌、33巻、6号、2003:p319-327

・日本心臓リハビリテーション学会編、心臓リハビリテーション必修、2010